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  • 一寸法師いっすんぼうし1:旅立たびだ

    なかごろのことなるに、くに難波なにわなにはさとに、おほぢおじとうばとはべり。うば四十しじゅうしじふおよぶまでのなきことをかなしみ、住吉すみよしまいまゐり、なきいのもうまうすに、大明神だいみょうじんだいみゃうじんれとおぼしめして、四十一しじゅういちしじふいちもうまうすにただならずなりぬれば、おほぢおじよろこかぎりなし。やがて十月とつきもうまうすに、いつくしき男子おのこをのこうけけり。さりながら、うまれおちてよりのちせい一寸いっすんありぬれば、やがてその一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしとぞづけられたり。

    年月としつきほどに、はや十二三じゅうにさんじふにさんになるまでそだてぬれどもせいひとならず。つくづくとおもけるは、ただものにてはあらざれ、ただ化物風情ばけものふぜいにてこそそうらさうら、われらいかなるつみむくいにて、かうのものをば住吉すみよしよりたまりたるぞや、あさましさよと、不便ふびんなり。夫婦ふうふおもけるうは、あの一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしめを何方いずかたいづかたへもやらばやとおもけるともうまうせば、やがて一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし、このよしうけたまわうけたまはり、おやにもかうにおもるるも口惜くちおくちをしき次第しだいかな、何方いずかたいづかたへもかばやとおもかたななくてはいかがとおもはりひとつうばにたまば、いだしたびにける。すなち、むぎわらにて柄鞘つかさやをこしらみやこのぼらばやとおもしが、自然しぜんふねなくてはいかがあるべきとて、またうばに「御器ごきはしとたべ」ともうまうしうけ、名残なごりしくむれども、でにけり。住吉すみよしうらより御器ごきふねとしてうちりて、みやこへぞのぼりける。

    みなれし難波なにわなにはうらでてみやこいそぐわがこころかな

    朗読ろうどく

    本文ほんぶん説明せつめい

    1: なかごろことなる
    • なかごろ中頃それほどとおくないむかし
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    • 接助偶然ぐうぜん条件じょうけん…が。…と。…ところ。
    それほどとおくないむかしのことであるが、 現代語訳を表示
    2: くに難波なにわなにはさとほぢおじうばはべ
    • つのくに津の国摂津せっつくに現在げんざい大阪府おおさかふ兵庫県ひょうごけん一部いちぶ
    • なに難波地名ちめい現在げんざい大阪市おおさかし一帯いったい
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • さと人家じんかあつまっているところ
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • ほぢおじ祖父年老としおいた男性だんせい。おじいさん。
    • うば姥・祖母年老としおいた女性じょせい。おばあさん。
    • はべり侍りあります。います。ございます。
    摂津せっつくに難波なにわというところに、おじいさんとおばあさんがんでいました。 現代語訳を表示
    3: うば四十しじゅうしじふおよぶまでなきことかなしみ、
    • うば姥・祖母年老としおいた女性じょせい。おばあさん。
    • 格助到達点とうたつてん…に。
    • 格助主格しゅかく…が。
    • なし無しない。存在そんざいしない。
    • 格助対象たいしょう…を。
    おばあさんが四十歳よんじっさいになるまでどもがいないことをかなしんで、 現代語訳を表示
    4: 住吉すみよしまいまゐなきいのもうまう
    • すみよし住吉住吉神社すみよしじんじゃ住吉すみよしかみは、うみ守護神しゅごしん和歌わかかみさずけのかみとしてられる。
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • 参る参詣さんけいする。寺社じしゃもうでる。
    • なし無しない。存在そんざいしない。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • うす〜申す補動もうげる。お~する。
    • 接助偶然ぐうぜん条件じょうけん…が。…と。…ところ。
    住吉神社すみよしじんじゃ参詣さんけいし、どもがいないことについておいのりしたところ、 現代語訳を表示
    5: 大明神だいみょうじんだいみゃうじんおぼしめして、
    • だいみゃうじん大明神住吉すみよしかみ
    • れなり形動かわいそうだ。どくだ。
    • おぼしめす思し召すおもいになる。
    住吉すみよし神様かみさまはかわいそうだとおおもいになって、 現代語訳を表示
    6: 四十一しじゅういちしじふいちもうまうただならなりぬれほぢおじよろこかぎりなし
    • うす申すもうします。
    • 接助逆接ぎゃくせつ確定かくてい条件じょうけん…けれども。…のに。
    • ただなり常なり形動普通ふつうである。
    • 助動打消うちけし…ない。
    • なる成る変化へんかする。なる。変化へんかする。なる。
    • 助動完了かんりょう…た。…てしまった。…てしまう。
    • 接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    • ほぢおじ祖父年老としおいた男性だんせい。おじいさん。
    • かぎりなし限りなしはなはだしい。このうえもない。
    四十一歳よんじゅういっさいもうしますのに(懐妊かいにんして)普通ふつうでない状態じょうたいになったので、おじいさんのよろこびようはこのうえない。 現代語訳を表示
    7: やがて十月とつきもうまういつくしき男子おのこをのこうけけり
    • やがてそのまま。その状態じょうたいで。
    • うす申すもうします。
    • 格助とき…に。…ときに。
    • いつくし美しととのっていてうつくしい。
    • のこ男子おとこ
    • 格助対象たいしょう…を。
    • うく設く・儲くる。さずかる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    そして十ヶ月じっかげつもうしますときに、うつくしいおとこさずかった。 現代語訳を表示
    8: さりながらうまれおちてよりのちせいいっすんありぬれ
    • さりながら然りながらしかしながら。けれども。
    • より格助時間的じかんてき起点きてん…から。
    • せい背丈せたけ身長しんちょう
    • すんながさの単位たんい。1すんやく3㎝にたる。
    • あり在り・有りある。いる。
    • 助動完了かんりょう…た。…てしまった。…てしまう。
    • 接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    しかしながら、(そのは)まれたあと身長しんちょう一寸いっすんしかなかったので、 現代語訳を表示
    9: やがてその一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしづけられたり
    • やがてそのまま。その状態じょうたいで。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • 係助強意きょうい
    • らる助動尊敬そんけい…なさる。お…になる。
    • たり助動完了かんりょう…た。…てしまった。
    夫婦ふうふは)そのままその一寸法師いっすんぼうし名付なづけなさった。 現代語訳を表示
    10: 年月としつきほど
    • 格助対象たいしょう…を。
    • ときがたつ。時間じかんぎる。
    • ほどうち。あいだ。
    • 格助とき…に。…ときに。
    年月ねんげつごすうちに、 現代語訳を表示
    11: はや十二三じゅうにさんじふにさんなるまでそだぬれどもせいひとなら
    • はやはやくも。すでに。
    • 格助変化へんか結果けっか…に。
    • なる成る変化へんかする。なる。
    • 助動完了かんりょう…た。…てしまった。…てしまう。
    • ども接助逆接ぎゃくせつ確定かくてい条件じょうけん…けれども。…のに。
    • せい背丈せたけ身長しんちょう
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    • 助動打消うちけし…ない。
    はやくも十二じゅうに三歳さんさいになるまでそだてたけれども、身長しんちょう人並ひとなみでない。 現代語訳を表示
    12: つくづくとおもけるは、
    • つくづく(と)熟く(と)しみじみと。こころふかく。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    夫婦ふうふが)にしみておもったことは、 現代語訳を表示
    13: ただものてはあらざれただ化物風情ばけものふぜいこそそうらさうら
    • ただもの徒者・只者普通ふつう人間にんげん
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    • 〜あり補動~である。~状態じょうたいである。
    • 助動打消うちけし…ない。
    • ただちょうど。まさに。
    • 〜ふぜい〜風情接尾~のようなもの。
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    • こそ係助強意きょうい…こそ。
    • らふら(ろ)う〜候ふ補動~です。~ます。
    (このは)普通ふつう人間にんげんではない、まさにもののようなものですよ、 現代語訳を表示
    14: われらいかなるつみむくにて
    • いかなり如何なり形動どうだ。どのようだ。
    • つみ道徳どうとく法律ほうりつそむ行為こうい悪行あくぎょう
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • むくい報いある行為こうい結果けっかとしてけること。応報おうほう
    • にて格助原因げんいん理由りゆう…によって。
    自分じぶんたちはどのようなつみ応報おうほうで、 現代語訳を表示
    15: ものをば住吉すみよしよりたまたる
    • うなり斯様なり形動このようだ。
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • 係助強意きょうい係助詞けいじょし「は」が格助詞かくじょし「を」のあといて濁音化だくおんかしたもの。
    • すみよし住吉住吉神社すみよしじんじゃ住吉すみよしかみは、うみ守護神しゅごしん和歌わかかみさずけのかみとしてられる。
    • より格助空間的くうかんてき起点きてん…から。
    • たま賜る・給はるいただく。頂戴ちょうだいする。
    • たり助動完了かんりょう…た。…てしまった。
    • 係助断定だんてい…だ。…である。
    • 間助詠嘆えいたん…よ。…だなあ。…ことだよ。
    このようなもの住吉神社すみよしじんじゃからいただいたのだろうか、 現代語訳を表示
    16: あさましさと、不便ふびんなり
    • あさましさなげかわしさ。なさけなさ。
    • 間助詠嘆えいたん…よ。…だなあ。…ことだよ。
    • みるめ見る目連語周囲しゅういから様子ようす
    • ふびんなり不便なり形動かわいそうだ。どくだ。
    なさけないことだよと、(まわりのひとたちのにも)どくえる。 現代語訳を表示
    17: 夫婦ふうふおもけるは、
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • 内容ないよう
    夫婦ふうふおもったことは、 現代語訳を表示
    18: あの一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし何方いずかたいづかたへもやらおもけるもうまう
    • 〜め〜奴接尾ひといやしめるあらわす。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • かた何方どちら。どこ。
    • ばや終助願望がんぼう…たい。…たいものだ。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • うす申すもうします。
    • 接助偶然ぐうぜん条件じょうけん…と。…ところ。
    あの一寸法師いっすんぼうしやつをどこへでもやりたいとおもったと(だれかに)もうしましたところ、 現代語訳を表示
    19: やがて一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし、このよしうけたまわうけたまは すぐに一寸法師いっすんぼうしはこのことをって、 現代語訳を表示 20: おやうにおもるる口惜くちおくちをしき次第しだいかな何方いずかたいづかたへもばやおも
    • 格助受身うけみ動作どうさしゅ…に。…によって。
    • うなり斯様なり形動このようだ。
    • 助動受身うけみ…れる。
    • くち口惜し残念ざんねんだ。がっかりだ。不本意ふほんいだ。
    • しだい次第経過けいか事情じじょう状況じょうきょう
    • かな終助詠嘆えいたん…だなあ。…ことだよ。
    • かた何方どちら。どこ。
    • ばや終助意志いし…う。…よう。…つもりだ。
    おやにまでこのようにおもわれるのも残念ざんねん状況じょうきょうだなあ、どこへでもこうとおもい、 現代語訳を表示
    21: かたななくてはいかがおもはりひとうばたま
    • なし無しない。存在そんざいしない。
    • いかが如何どうか。どうだろうか。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • うば姥・祖母年老としおいた女性じょせい。おばあさん。
    • 格助対象たいしょう…に。…にたいして。
    • 請ふもとめる。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お…になる。
    • 接助偶然ぐうぜん条件じょうけん…と。…ところ。
    かたながなくてはどうかとおもい、はりを一ほん(くださいと)おばあさんにおねがいなさったところ、 現代語訳を表示
    22: いだたびける
    • たぶ賜ぶ・給ぶくださる。おあたえになる。
    • 助動完了かんりょう…た。…てしまった。…てしまう。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    してくださった。 現代語訳を表示
    23: すなはちむぎわらにて柄鞘つかさやこしら
    • すな即ちそこで。そのときに。
    • むぎわら麦藁むぎくき乾燥かんそうさせたもの。
    • にて格助材料ざいりょう…で。
    • つかかたな部分ぶぶん
    • さや刀身とうしんおさめる筒型つつがたのケース。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • こしらふら(ろ)う拵ふつくす。製造せいぞうする。
    そこで、麦藁むぎわらかたなつかさやつくり、 現代語訳を表示
    24: みやこのぼばやおも
    • みやこ都・京京都きょうと
    • のぼる上る地方ちほうからく。
    • ばや終助…う。…よう。…つもりだ。
    • 助動過去かこ…た。
    • 接助偶然ぐうぜん条件じょうけん…が。…と。…ところ。
    みやこのぼろうとおもったが、 現代語訳を表示
    25: 自然しぜんふねなくてはいかがあるべきとて
    • しぜん自然もしも。万一まんいち
    • なし無しない。存在そんざいしない。
    • いかが如何どう。どのように。
    • 〜あり補動~である。~状態じょうたいである。
    • べし助動推量すいりょう…だろう。…にちがいない。
    • とて格助引用いんよう…とって。…とおもって。
    もしふねがなかったらどうだろうかとおもって、 現代語訳を表示
    26: またうば御器ごきはしたべ」ともうまうしうけ
    • うば姥・祖母年老としおいた女性じょせい。おばあさん。
    • 格助対象たいしょう…に。…にたいして。
    • ごき御器蓋付ふたつきの食器しょっきとくわんすことがおおい。
    • たぶ賜ぶ・給ぶくださる。おあたえになる。
    • うしうく申し受くねがる。
    またおばあさんに「おわんはしをください」とおねがいして(おわんはしを)いただき、 現代語訳を表示
    27: 名残なごりしくむれどもけり
    • なごり名残惜し心残こころのこりだ。なにかがわるのが残念ざんねんだ。
    • ども接助逆接ぎゃくせつ確定かくてい条件じょうけん…けれども。…のに。
    • たちい立ち出づく。る。
    • 助動完了かんりょう…た。…てしまった。…てしまう。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    (おじいさんとおばあさんは)わかれるのをつらくおもって(旅立たびだちを)めたけれども、いえてしまった。 現代語訳を表示
    28: 住吉すみよしうらより御器ごきふねとしてうちりて、みやこのぼける
    • すみよし住吉地名ちめい現在げんざい大阪市おおさかし住吉区すみよしく一帯いったい
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • うら海岸かいがん海辺うみべ
    • より格助空間的くうかんてき起点きてん…から。
    • ごき御器蓋付ふたつきの食器しょっきとくわんすことがおおい。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • うち〜接頭ちょっと。ふと。
    • みやこ京都きょうと
    • 係助強意きょうい
    • のぼる上る地方ちほうからみやこく。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    住吉すみよし岸辺きしべからおわんふねとしてそれにって、みやこのぼった。 現代語訳を表示
    29: みなれ難波なにわなにはうらみやこいそこころかな
    • 助動過去かこ…た。
    • なに難波地名ちめい現在げんざい大阪市おおさかし一帯いったい
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • うら海岸かいがん海辺うみべ
    • 格助起点きてん…を。…から。
    • たちい立ち出づく。る。
    • みやこ京都きょうと
    • 我・吾わたし
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • こころ気持きもち。感情かんじょう
    • かな終助詠嘆えいたん…だなあ。…ことだよ。
    れた難波なにわうら旅立たびだって、みやこをめざしていそわたしこころ 現代語訳を表示

    現代語訳げんだいごやく

    それほどとおくないむかしのことであるが、摂津せっつくに難波なにわというところに、おじいさんとおばあさんがんでいました。おばあさんが四十歳よんじっさいになるまでどもがいないことをかなしんで、住吉神社すみよしじんじゃ参詣さんけいし、どもがいないことについておいのりしたところ、住吉すみよし神様かみさまはかわいそうだとおおもいになって、四十一歳よんじゅういっさいもうしますのに(懐妊かいにんして)普通ふつうでない状態じょうたいになったので、おじいさんのよろこびようはこのうえない。そして十ヶ月じっかげつもうしますときに、うつくしいおとこさずかった。しかしながら、(そのは)まれたあと身長しんちょう一寸いっすんしかなかったので、(夫婦ふうふは)そのままその一寸法師いっすんぼうし名付なづけなさった。

    年月ねんげつごすうちに、はやくも十二じゅうに三歳さんさいになるまでそだてたけれども、身長しんちょう人並ひとなみでない。(夫婦ふうふが)にしみておもったことは、(このは)普通ふつう人間にんげんではない、まさにもののようなものですよ、自分じぶんたちはどのようなつみ応報おうほうで、このようなもの住吉神社すみよしじんじゃからいただいたのだろうか、なさけないことだよと、(まわりのひとたちのにも)どくえる。夫婦ふうふおもったことは、あの一寸法師いっすんぼうしやつをどこへでもやりたいとおもったと(だれかに)もうしましたところ、すぐに一寸法師いっすんぼうしはこのことをって、おやにまでこのようにおもわれるのも残念ざんねん状況じょうきょうだなあ、どこへでもこうとおもい、かたながなくてはどうかとおもい、はりを一ほん(くださいと)おばあさんにおねがいなさったところ、してくださった。そこで、麦藁むぎわらかたなつかさやつくり、みやこのぼろうとおもったが、もしふねがなかったらどうだろうかとおもって、またおばあさんに「おわんはしをください」とおねがいして(おわんはしを)いただき、(おじいさんとおばあさんは)わかれるのをつらくおもって(旅立たびだちを)めたけれども、いえてしまった。住吉すみよし岸辺きしべからおわんふねとしてそれにって、みやこのぼった。

    れた難波なにわうら旅立たびだって、みやこをめざしていそわたしこころ