二日といふ夜、男、われて「あはむ」と言ふ。
その二日目の夜、男は、心が乱れて「逢おう」と言う。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:9
女もはた、いとあはじとも思へらず。
女(斎宮)の方もそれほど強く逢うまいと思っているわけではない。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:10
されど、人目しげければ、えあはず。
しかし、人目が多いので、どうしても逢うことができない。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:11
今宵だに人しづめて、いととくあはむと思ふに、
せめて今夜こそは人の寝静まるのを待って、とても早く逢おうと思っていると、「狩の使2:夢うつつ(伊勢物語)」:12
男も人しれず血の涙を流せど、えあはず。
男もひそかに辛い涙を流して悲しむが、どうしても逢うことができない。「狩の使2:夢うつつ(伊勢物語)」:17