この教材はどのように使ってもよいのですが、初めて文語文を学ぶ人のために、使い方の例を示します。
まず、文語文のテキストはどんなものか見てみましょう。上部のメニューから「テキスト一覧」をクリックします。
16のテキストが時代順に並んでいます。手始めに、時代が新しくて本文が短い「故郷」を見てみましょう。
「故郷」は1914年に作られた唱歌の歌詞です。また、「故郷」の朗読と歌唱は「テキスト」の本文の後にあるプレイヤーで聞くことができます。このテキストの背景についての詳しい説明は「テキスト一覧」の「解説」を見てください。
1番から3番までの歌詞がテキストの本文です。
画面の右上に、ふりがなというボタンがあります。このボタンで、3つの表示モード(旧仮名遣い・新仮名遣い・表示しない)の切り換えができます。
「旧仮名遣い」モードで、文語文の仮名遣いがわかります。現代日本語と違うところがあります。現在の読み方を知りたい時は「新仮名遣い」モードを選んでください。「表示しない」モードでは、ふりがなが表示されません。このテキストを勉強してから、「表示しない」モードにして、正しく読めるかどうかチャレンジしてみてもいいかもしれません。
さて、「本文」を見て、すぐに意味がわかるでしょうか。文語で書かれているので、わからないところも多いと思います。わからないところについて、「本文の説明」を見てみましょう。最初の「兎追ひしかの山」をクリックしてみてください。
「うさぎ」「き」「かの」という言葉が出てきます。
「き」という言葉は本文にはありませんが、本文にある「し」は助動詞で、基本形(終止形)が「き」です。このように、活用する言葉は辞書に出てくる基本形で示してあります。それぞれの言葉の品詞(言葉の種類)の略号と意味が右側に書いてあります。
一つ一つの言葉の意味はわかったでしょうか。それでは、「兎追ひしかの山」を現代日本語に訳してみてください。
うまく訳せましたか?訳が合っているかどうか、「現代語訳を表示」をクリックして確認しましょう。
「き」と「かの」については、「参考資料」の「語彙リスト」のそれぞれのページにリンクしています。「き」をクリックしてみてください。「語彙リスト」の助動詞「き」のページが表示されます。
「語彙リスト」の助動詞「き」の項目には、この教材の中の「き」が使われている例文が全部載っています。多くのテキストで「き」が、いろいろな形で使われていることがわかります。最後のほうを見ると、さきほど「故郷」のテキストで見た「兎追ひしかの山」が見つかります。
例文のリンク「故郷(文部省唱歌)」から、テキストのその箇所に移動することができます。
以上のようにして、意味がわかりにくいところを確かめながら、「本文の説明」の最後まで進んでください。
「テキスト一覧」の「故郷」の「語彙リスト」から、このテキストに出てくる語彙をまとめて確認することができます。文語文を学んだ経験がある人は、このリストを見れば、本文を訳すことができるかもしれません。
最後に、「現代語訳」の部分で正しく訳せたかどうか確認しましょう。
現代語訳を確認したら、テキスト一覧の「クイズ」をクリックして、問題に答えてみてください。
20点満点のクイズです。解答後に、採点結果やフィードバックを見ることができます。
なお、このクイズはGoogleフォームを使っていますが、回答者の名前やメールアドレスの収集はしていません。
「故郷」を読んで訳してみて、どうでしたか?
「故郷」の本文についてはだいたい意味がわかったけれど、ほかの文語文も読めるかどうかわからない、と思っている人が多いと思います。たしかに、これだけではまだまだ文語文は読めません。自分が読みたい文語文が読めるようになるためには、文語文法の基礎的な知識を身につけることが必要です。
文語文法の基礎知識を身につけるためには、語彙リストにあるような重要語句を覚えるとともに、文法に関する基本的な事項を学習しなければなりません。そのためには、参考資料ページの各種の一覧表が役に立つはずです。
まず、文語文のテキストを読むときの発音のルールについては、「旧仮名遣いで書かれた文字の読み方」を見てください。「故郷」のテキストで見たふりがなは「旧仮名遣い」と「新仮名遣い」で違っていたことを思い出してください。その読み替えのルールが理解できると思います。
次に、文語文に出てくる言葉の分類のしかたを知っておく必要があります。「品詞分類表」を見て勉強してください。全部で10種類の品詞があります。これは日本の学校で日本語の文法を教える時に使う一般的な品詞分類にもとづいています。
「品詞分類表」の中に出てくる動詞、形容詞、形容動詞を合わせて「用言」と呼びます。活用する(変化する)言葉という意味です。現代日本語でも、たとえば動詞の「書く」は「書か(ない)」、「書き(ます)」、「書く(時)」などと変化します。それと同じです。「動詞活用表」「形容詞・形容動詞活用表」に活用のしかたが示されていますので、参考にしてください。この3つの表は、この後の「助動詞活用表」とともに印刷して、テキストを読む時に常に参照することをお勧めします。
「助動詞活用表」もとても重要な参考資料です。助動詞は他の言葉に付けて使われる付属語の一つで、上の「用言」と同じように活用します。先に見た「故郷」のテキストにあった「き」は助動詞の1つです。助動詞の活用と文法的意味を理解することは、文語文を正確に読む上で欠かせない条件です。
「助詞一覧」は分量が大きいので3つに分けています。「助詞」も「助動詞」と同じように他の言葉に付く付属語ですが、活用しません。この教材の「助詞一覧」では、現代日本語にないもの、あるいは現代日本語に同じ助詞があっても違った意味で使われる例に★を付けてありますので、そこを中心に学習するとよいと思います。
「活用形の用法一覧」は、ある程度文語文法の学習が進んだら、ぜひ参考にしてほしい資料です。上に出てきた動詞、形容詞、形容動詞、助動詞に属する語には、それぞれ最大で6つの形(「活用形」)があります。未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形と言います。(例えば文語の「書く」なら、それぞれ「書か」「書き」「書く」「書く」「書け」「書け」という形になります。)この6つの活用形がどのような場合に使われるかを整理したのが、「活用形の用法」の表です。
その他、動詞などの発音の変化を示した「音便一覧」、係助詞の使用についてのルールを示した「係り結びの法則」、敬語を種類別・意味別に整理した「敬語一覧」、和歌に関する重要事項をまとめた「和歌の修辞」、「主な枕詞と掛詞」などの参考資料があります。