接続活用語の連用形に付く。
むかし、男ありけり。
昔、男がいた。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:1
その男、伊勢の国に狩の使に行きけるに、
その男が伊勢の国に狩の使として行ったところ、「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:2
かの伊勢の斎宮なりける人の親、
その伊勢の斎宮だった人の親が、「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:3
「つねの使よりは、この人よくいたはれ」と言ひやれりければ、
「いつもの使者よりはこの人によくしてあげなさい」と言ってやってあったので、「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:4
親の言なりければ、いとねむごろにいたはりけり。
(斎宮は、)親の言うことだったので、大変心をこめて世話をした。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:5
夕さりはかへりつつ、そこに来させけり。
夕方は帰ってくるたびにそこに来させた。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:7
かくて、ねむごろにいたつきけり。
このようにして、手厚く面倒をみたのだった。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:8
女のねや近くありければ、
女の寝所近くに泊まっていたので、「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:13
子一つばかりに、男のもとに来たりけり。
子一つの時分に、男のところに来たのだった。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:15
男はた、寝られざりければ、
男もまた寝られなかったので、「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:16
まだ何ごともかたらはぬにかヘりにけり。
まだ何も語り合わないのに(女は)帰ってしまったのだった。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:21
男、いとかなしくて、寝ずなりにけり。
男はとても悲しくて、寝なくなってしまった。「狩の使1:おぼろ月(伊勢物語)」:22
狩の使ありと聞きて、夜ひと夜、酒飲みしければ、
狩の使が滞在していると聞いて、一晩中酒宴を催したので、「狩の使2:夢うつつ(伊勢物語)」:14
とて、明くれば尾張の国へこえにけり。
と詠んで、夜が明けたので尾張の国に向けて国境を越えて行ったのだった。「狩の使2:夢うつつ(伊勢物語)」:26
二十日の夜の月出でにけり。
二十日の夜の月が出てしまった。「二十日の夜の月(土佐日記)」:1
昔、阿倍仲麻呂といひける人は、唐土に渡りて、帰り来ける時に、
昔、安倍仲麻呂といった人は、唐の国に渡って、帰って来た時に、「二十日の夜の月(土佐日記)」:4
別れ惜しみて、かしこの漢詩作りなどしける。
別れを惜しんで、あちらの漢詩作りなどをした。「二十日の夜の月(土佐日記)」:6
飽かずやありけむ、二十日の夜の月出づるまでぞありける。
名残惜しかったのだろうか、二十日の夜の月が出るまで宴会は続いた。「二十日の夜の月(土佐日記)」:7
その月は海よりぞ出でける。
その月は海から出た。「二十日の夜の月(土佐日記)」:8
とて、詠めりける歌、
と言って、詠んだ歌は、「二十日の夜の月(土佐日記)」:12
とぞ詠めりける。
と詠んだのだった。「二十日の夜の月(土佐日記)」:14
ここの言葉伝へたる人に言ひ知らせければ、
ここの言葉を伝えている通訳に言い知らせたところ、「二十日の夜の月(土佐日記)」:17
いと思ひの外になむ賞でける。
とても意外なほどに賞賛した。「二十日の夜の月(土佐日記)」:19
これも今は昔、比叡の山に児ありけり。
これも今となっては昔のことであるが、比叡山の延暦寺に稚児がいた。「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:1
「いざ、かいもちひせん」と言ひけるを、
「さあ、ぼた餅を作ろう」と言ったのを、「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:3
この児、心よせに聞きけり。
この稚児は期待して聞いた。「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:4
かたかたによりて、寝たるよしにて、出で来るを待ちけるに、
隅の方に寄って、寝たふりをして、できるのを待っていたところ、「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:6
うれしとは思へども、ただ一度にいらへんも、待ちけるかともぞ思ふとて、
うれしいとは思うけれども、たった一度で返事をするのも、待っていたかと(僧たちが)思うといけないと思って、「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:10
「や、な起こしたてまつりそ。幼き人は寝入り給ひにけり」
「や、お起こしするな。幼い人はぐっすり寝入ってしまわれた」「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:12
ひしひしとただくひにくふ音のしければ、
むしゃむしゃとひたすら食べる音がしたので、「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:15
ずちなくて、むごの後に「えい」といらへたりければ、
どうしようもなくて、長時間経ってから「はい」と返事をしたところ、「ちごの空寝(宇治拾遺物語)」:16
薩摩守馬より下り、みづから高らかに宣ひけるは、
薩摩守は馬から下り、自分で大きな声でおっしゃったことは、「忠度都落1:落人(平家物語)」:7
薩摩守宣ひけるは、
薩摩守がおっしゃったことは、「忠度都落1:落人(平家物語)」:14
今はとてうッたたれける時、是をとッてもたれたりしが、
「今は(都落ちをしよう)」ということで出発なさった時、これを取ってお持ちになっていたのだが、「忠度都落1:落人(平家物語)」:34
其後世しづまッて、千載集を撰ぜられけるに、
その後、世の中が平穏になって、(俊成卿が)千載集を編集なさった時に、「忠度都落2:故郷の花(平家物語)」:18
今更思ひ出でて哀れなりければ、
あらためて思い出して感慨が深かったので、「忠度都落2:故郷の花(平家物語)」:20
さりぬべき歌いくらもありけれども、
(勅撰集に選ばれるのに)ふさわしい歌はいくつもあったが、「忠度都落2:故郷の花(平家物語)」:22
「故郷花」といふ題にてよまれたりける歌一首ぞ、
「故郷の花」という題でお詠みになった歌一首を、「忠度都落2:故郷の花(平家物語)」:24
「読人知らず」と入れられける。
「読人知らず」としてお入れになった。「忠度都落2:故郷の花(平家物語)」:25
やがて十月と申すに、いつくしき男子をまうけけり。
そして十ヶ月と申します時に、美しい男の子を授かった。「一寸法師1:旅立ち」:7
つくづくと思ひけるは、
(夫婦が)身にしみて思ったことは、「一寸法師1:旅立ち」:12
夫婦思ひけるやうは、
夫婦が思ったことは、「一寸法師1:旅立ち」:17
あの一寸法師めを何方へもやらばやと思ひけると申せば、
あの一寸法師の奴をどこへでもやりたいと思ったと(だれかに)申しましたところ、「一寸法師1:旅立ち」:18
取り出したびにける。
取り出してくださった。「一寸法師1:旅立ち」:22
名残惜しく止むれども、立ち出でにけり。
(おじいさんとおばあさんは)別れるのをつらく思って(旅立ちを)引き止めたけれども、家を出てしまった。「一寸法師1:旅立ち」:27
住吉の浦より御器を舟としてうち乗りて、都へぞ上りける。
住吉の岸辺からお椀を舟としてそれに乗って、都へ上った。「一寸法師1:旅立ち」:28
「もの申さん」と言ひければ、
「ごめんください」と言ったところ、「一寸法師2:上京」:5
そこなる足駄履かんと召されければ、
そこにある足駄をはこうとしてお召しに(なりそうに)なったところ、「一寸法師2:上京」:13
不思議に思ひて見れば、一興なる者にてありけり。
不思議に思って見ると、風変わりな者(がいるの)であった。「一寸法師2:上京」:15
「げにもおもしろき者なり」とて、御笑ひなされけり。
「まことにおもしろい奴だ」とおっしゃって、お笑いになった。「一寸法師2:上京」:17
宰相殿、大きに怒らせ給ひければ、
宰相殿はひどく立腹なさ(って御覧にな)ったところ、「一寸法師3:姫君」:14
一寸法師申しけるは、「わらはが物を取らせ給ひて候ふ程に、
一寸法師が(姫君に)申し上げたことは、「(あなたが)私の物をお取りになりますので、「一寸法師3:姫君」:19
とにかくにもはからひ候へ、とありける」とて、
どのようにでも取りはからいなさい、と(宰相殿のご指示が)あった」と言って、「一寸法師3:姫君」:20
姫君はただ夢の心地して、あきれはててぞおはしける。
姫君はまさに夢を見ているような気がして、茫然としていらっしゃった。「一寸法師3:姫君」:22
一寸法師は、姫君を先に立ててぞ出でにけり。
一寸法師は、姫君を先に立たせて(後に付いて)出て行ってしまった。「一寸法師3:姫君」:26
宰相殿は、あはれ、このことをとどめ給ひかしとおぼしけれども、
宰相殿は、「ああ、(姫君の母君が)このことをお止めになってくれよ」とお思いになったけれども、「一寸法師3:姫君」:27
折節、風荒くして、興がる島へぞ着けにける。
ちょうどその時、風が荒くて、風変わりな島に(舟を)着けてしまった。「一寸法師4:鬼が島」:5
舟
舟
かや
このように風
思
思
口
口
一寸法師
一寸法師
極楽浄土
極楽浄土
いかにもうまさ
とても美味
不思議
(このように)思
その後
その後
急
急
父母
(少将
御一門
ご一族
宰相殿
宰相
その後
その後
めでたく栄
めでたくお栄
これに過
これ以上
然
だから、この言葉