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  • 一寸法師いっすんぼうし3:姫君ひめぎみ

    かくて年月としつきおくほどに、一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし十六じゅうろくじふろくになり、せいはもとのままなり。さるほどに、宰相殿さいしょうどのさいしゃうどの十三じゅうさんじふさんにならせたま(も)たま姫君ひめぎみします。おんかたちすぐれそうらさうらば、一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし姫君ひめぎみたてまつりしよりおもとなり、いかにもしてあんをめぐらし、わが女房にょうぼうにょうばうにせばやとおも、あるとき貢物みつぎもの打撒うちまきり、茶袋ちゃぶくろれ、姫君ひめぎみしておしますに、はかりごとをめぐらし、姫君ひめぎみ御口おんくちり、さて茶袋ちゃぶくろばかりちてたり。

    宰相殿さいしょうどのさいしゃうどの御覧ごらんじて、御尋おんたずおんたづねありければ、「姫君ひめぎみの、わらがこのほどあつめてそうら(ろ)さうら打撒うちまきを、らせたま御参おんまいおんまゐそうら(ろ)さうら」ともうまうせば、宰相殿さいしょうどのさいしゃうどのおおおほきにいからせたまければ、あんのごとく姫君ひめぎみ御口おんくちきてあり。「まことはいつわいつはりならず。かかるものみやこきてなにかせん。いかにもうしな(の)うしなべし」とて、一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしおおおほせつけらるる。一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしもうまうしけるは、「わらものらせたまそうら(ろ)さうらほどに、とにかくにもはからそうらさうら、とありける」とて、こころうちうれしくおもことかぎりなし。姫君ひめぎみはただゆめ心地ここちして、あきれはててぞおしける。

    一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし、「とくとく」とすすめもうまうせば、やみとおとほ風情ふぜいにて、みやこでて、あしにまかせてあゆたま(も)たま御心みこころうちはかてこそそうらさうら。あらいたしや。一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしは、姫君ひめぎみさきててぞでにけり。宰相殿さいしょうどのさいしゃうどのは、あれ、このことをとどめたまかしとおぼしけれども、継母ままははのことなれば、さしてとどめたまず。女房にょうぼうにょうばうたちもたまず。

    本文ほんぶん説明せつめい

    1: かくて年月としつきおくほど
    • かくて斯くてこうして。
    • ほどうち。あいだ。
    • 格助とき…に。…ときに。
    こうして年月ねんげつおくるうちに、 現代語訳を表示
    2: 一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし十六じゅうろくじふろくなりせいもとままなり
    • いっすんぼ一寸法師この物語ものがたり主人公しゅじんこう身長しんちょう一寸いっすんやく3㎝)しかないので、このようにばれている。
    • 格助変化へんか結果けっか…に。
    • なる成る変化へんかする。なる。
    • せい背丈せたけ身長しんちょう
    • もと元・本・許以前いぜんむかし
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • まま…のとおり。おな状態じょうたい
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    一寸法師いっすんぼうし十六歳じゅうろくさいになり、(しかし)身長しんちょう以前いぜんおなじである。 現代語訳を表示
    3: さるほど宰相殿さいしょうどのさいしゃうどの十三じゅうさんじふさんならたま(も)たま姫君ひめぎみします
    • さるほどに然る程にさて。ところで。
    • さいしうどの宰相殿宰相さいしょう参議さんぎという官職かんしょく中国風ちゅうごくふうかた参議さんぎ大納言だいなごん中納言ちゅうなごん要職ようしょく殿との敬称けいしょう
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • 格助変化へんか結果けっか…に。
    • なる成る変化へんかする。なる。
    • 助動尊敬そんけい…なさる。お…になる。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お~になる。
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • します御座しますいらっしゃる。おありになる。
    さて、宰相さいしょう殿どの(のところ)に十三歳じゅうさんさいになられる姫君ひめぎみがいらっしゃる。 現代語訳を表示
    4: おんかたちすぐれそうらさうら
    • かたち形・容・貌かおかたち。容貌ようぼう
    • らふら(ろ)う〜候ふ補動~です。~ます。
    • 接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    容貌ようぼううつくしうございますので、 現代語訳を表示
    5: 一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし姫君ひめぎみたてまつよりおもなり
    • いっすんぼ一寸法師この物語ものがたり主人公しゅじんこう身長しんちょう一寸いっすんやく3㎝)しかないので、このようにばれている。
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • 格助対象たいしょう…を。
    • みる見るる。
    • 〜たてまつる〜奉る補動もうげる。お~する。
    • 助動過去かこ…た。
    • より格助時間的じかんてき起点きてん…から。
    • おも思ひ恋心こいごころ愛情あいじょう
    • なる成る変化へんかする。なる。
    一寸法師いっすんぼうし姫君ひめぎみ拝見はいけんしたときから恋心こいごころつようになり、 現代語訳を表示
    6: いかにあんめぐらし、
    • いかなり如何なり形動どうだ。どのようだ。
    • する。
    • あんかんがえ。計画けいかく
    • 格助対象たいしょう…を。
    • めぐらす回らす・巡らす思案しあんする。くわだてる。
    どのようにでもして思案しあんして、 現代語訳を表示
    7: 女房にょうぼうにょうばうばやおも
    • 我・吾自分じぶん
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • にょう女房つま
    • 格助変化へんか結果けっか…に。
    • する。
    • ばや終助意志いし…う。…よう。…つもりだ。
    自分じぶんつまにしようとおもい、 現代語訳を表示
    8: あるとき貢物みつぎもの打撒うちまきり、茶袋ちゃぶくろ
    • みつぎもの貢ぎ物献上けんじょうひん
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の
    • うちまき打撒こめ魔除まよけのためにこめをまくことから、こめとしてもちいられた。
    • ちゃぶくろ茶袋茶葉ちゃばれる紙袋かみぶくろ
    • 格助対象たいしょう…に。…にたいして。
    • いる入るれる。
    あるとき献上けんじょうひんこめって茶袋ちゃぶくろれ、 現代語訳を表示
    9: 姫君ひめぎみします、はかりごとめぐらし、
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • 格助主格しゅかく…が。
    • ふす伏す・臥すよこになる。る。
    • 〜おします補動~ていらっしゃる。
    • 格助とき…に。…ときに。
    • はかりごと謀・策計略けいりゃくひとをだますための計画けいかく
    • 格助対象たいしょう…を。
    • めぐらす回らす・巡らす思案しあんする。くわだてる。
    姫君ひめぎみていらっしゃるときに、計略けいりゃくをたてて、 現代語訳を表示
    10: 姫君ひめぎみ御口おんくちり、さて茶袋ちゃぶくろばかりちてたり
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • 格助対象たいしょう…に。…にたいして。
    • さてそして。それで。
    • ちゃぶくろ茶袋茶葉ちゃばれる紙袋かみぶくろ
    • ばかり副助限定げんてい…だけ。…ばかり。
    • 補動~ている。
    • たり助動完了かんりょう~た。~てしまった。
    姫君ひめぎみのおくちに(こめこなを)り、そして茶袋ちゃぶくろだけをっていていた。 現代語訳を表示
    11: 宰相殿さいしょうどのさいしゃうどの御覧ごらんて、御尋おんたずおんたづありけれ
    • さいしうどの宰相さいしょう参議さんぎという官職かんしょく中国風ちゅうごくふうかた参議さんぎ大納言だいなごん中納言ちゅうなごん要職ようしょく殿との敬称けいしょう
    • ごらんず御覧ずらんになる。
    • たづね尋ね質問しつもん
    • あり在り・有りある。いる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • 接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    宰相さいしょう殿どの御覧ごらんになって、(いている理由りゆうについて)おたずねがあったので、 現代語訳を表示
    12: 姫君ひめぎみわらこのほどあつめてそうら(ろ)さうら打撒うちまき
    • ひめぎみひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • 格助主格しゅかく…が。
    • わらわたし
    • 格助主格しゅかく…が。
    • ほどおり時分じぶん
    • らふら(ろ)う〜候ふ補動〜です。〜ます。
    • うちまき打撒こめ魔除まよけのためにこめをまくことから、こめとしてもちいられた。
    • 格助対象たいしょう…を。
    姫君ひめぎみが、わたしがこのごろあつめておきましたこめを、 現代語訳を表示
    13: たまおんまいそうら(ろ)さうら」ともうまう げなさってがります」ともうげると、 現代語訳を表示 14: 宰相殿さいしょうどのさいしゃうどのおおおほきにいかたまけれ
    • さいしうどの宰相殿宰相さいしょう参議さんぎという官職かんしょく中国風ちゅうごくふうかた参議さんぎ大納言だいなごん中納言ちゅうなごん要職ようしょく殿との敬称けいしょう
    • おほきなり大きなり形動おおきい。はなはだしい。
    • 助動尊敬そんけい…なさる。お…になる。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お~になる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • 接助偶然ぐうぜん条件じょうけん…と。…ところ。
    宰相さいしょう殿どのはひどく立腹りっぷくなさ(って御覧ごらんにな)ったところ、 現代語訳を表示
    15: あんごとく姫君ひめぎみ御口おんくちきてあり
    • あんかんがえ。予想よそう
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • ごとし如し助動比況ひきょう…ようだ。
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • 〜あり補動〜である。〜状態じょうたいである。
    予想よそうしたとおりに姫君ひめぎみのおくちに(こめこなが)いている。 現代語訳を表示
    16: まこといつわいつはなら
    • まこと真・実・誠真実しんじつ事実じじつ本当ほんとうのこと。
    • いつ偽りうそ虚言きょげん
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    • 助動打消うちけし…ない。
    真相しんそうは(一寸法師いっすんぼうしったことが)うそではない(ということだ)。 現代語訳を表示
    17: かかるものみやこきてなに
    • かかり斯かりこのようだ。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • みやこ都・京京都きょうと
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • 係助反語はんご…だろうか、いや…ない。
    • する。
    • む(ん)助動推量すいりょう…だろう。
    このようなものみやこいてどうしようか、いや、どうしようもない。 現代語訳を表示
    18: いかにうしな(の)うしなべしとて一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしおおおほせつけらるる
    • いかなり如何なり形動どうだ。どのようだ。
    • べし助動命令めいれい…せよ。…なさい。
    • とて格助引用いんよう…とって。…とおもって。
    • いっすんぼ一寸法師この物語ものがたり主人公しゅじんこう身長しんちょう一寸いっすんやく3㎝)しかないので、このようにばれている。
    • 格助対象たいしょう…に。…にたいして。
    • おほせつく仰せ付く命令めいれいなさる。おめいじになる。
    • らる助動尊敬そんけい…なさる。お…になる。
    どのようにでもしなさい」とって、一寸法師いっすんぼうし命令めいれいなさった。 現代語訳を表示
    19: 一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしもうまうけるは、「わらものたまそうら(ろ)さうらほど
    • いっすんぼ一寸法師この物語ものがたり主人公しゅじんこう身長しんちょう一寸いっすんやく3㎝)しかないので、このようにばれている。
    • うす申すもうげる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • わらわたし
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • 助動尊敬そんけい…なさる。お…になる。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お~になる。
    • らふら(ろ)う〜候ふ補動…です。…ます。
    • ほどに程に接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    一寸法師いっすんぼうしが(姫君ひめぎみに)もうげたことは、「(あなたが)わたしものをおりになりますので、 現代語訳を表示
    20: とにかくにもはからそうらさうら、とありけるとて
    • とにかくにも副詞あれこれと。どのようにでも。
    • はからふら(ろ)う計らふ処置しょちする。対処たいしょする。
    • らふら(ろ)う〜候ふ補動…です。…ます。
    • あり在り・有りある。いる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • とて格助引用いんよう…とって。…とおもって。
    どのようにでもりはからいなさい、と(宰相さいしょう殿どののご指示しじが)あった」とって、 現代語訳を表示
    21: こころうちうれしくおもことかぎりなし
    • こころこころ精神せいしん
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • うちなか内部ないぶ
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • かぎりなし限りなしはなはだしい。このうえない。
    こころなかうれしくおもうことはこのうえない。 現代語訳を表示
    22: 姫君ひめぎみただゆめ心地ここちて、あきれはてける
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • ただちょうど。まさに。
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • ここち心地気持きもち。
    • する。
    • 〜はつ補動すっかり~しわる。
    • 係助強意きょうい
    • 〜お補動~ていらっしゃる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    姫君ひめぎみはまさにゆめているようながして、茫然ぼうぜんとしていらっしゃった。 現代語訳を表示
    23: 一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふし、「とくとく」とすすめもうまう
    • いっすんぼ一寸法師この物語ものがたり主人公しゅじんこう身長しんちょう一寸いっすんやく3㎝)しかないので、このようにばれている。
    • とく疾くはやく。すぐに。いそいで。
    • とく疾くはやく。すぐに。いそいで。
    • うす〜申す補動もうげる。お~する。
    • 接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    一寸法師いっすんぼうしが「はやはやく」と(出発しゅっぱつを)おすすめするので、 現代語訳を表示
    24: やみとおとほ風情ふぜいにてみやこて、あしまかせあゆたま(も)たま
    • やみひかりがささないこと。暗闇くらやみ
    • ふぜい風情様子ようす。さま。
    • にて格助状態じょうたい…で。…の状態じょうたいで。
    • みやこ都・京京都きょうと
    • 出づはなれる。のがれる。
    • 格助対象たいしょう…に。…にたいして。
    • まかす任すまかせる。するままにさせる。
    • あゆむ歩むすすむ。あるく。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お~になる。
    姫君ひめぎみは)暗闇くらやみなかとおくまでくような様子ようすで、みやこて、あしくままにおあるきになる。 現代語訳を表示
    25: こころうちはかこそそうらさうらあらいた
    • こころこころ精神せいしん
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • うち内・中なか内部ないぶ
    • おしはからふら(ろ)う推し量らふ推量すいりょうする。推察すいさつする。
    • こそ係助強意きょうい…こそ。
    • らふら(ろ)う〜候ふ補動~です。~ます。
    • あらああ。
    • いた労しどくだ。かわいそうだ。
    • 間助詠嘆えいたん…よ。…だなあ。…ことだよ。
    姫君ひめぎみの)御心みこころのうちをはかります。ああ、なんどくなことよ。 現代語訳を表示
    26: 一寸法師いっすんぼうしいっすんぼふしは、姫君ひめぎみさきけり
    • いっすんぼ一寸法師この物語ものがたり主人公しゅじんこう身長しんちょう一寸いっすんやく3㎝)しかないので、このようにばれている。
    • ひめぎみ姫君ひめ貴人きじんむすめきみ敬称けいしょう
    • 格助対象たいしょう…を。
    • 格助場所ばしょ…に。…で。
    • たつ立つてる。
    • 係助強意きょうい
    • いづ出づかける。出発しゅっぱつする。
    • 助動完了かんりょう…た。…てしまった。…てしまう。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    一寸法師いっすんぼうしは、姫君ひめぎみさきたせて(あといて)ってしまった。 現代語訳を表示
    27: 宰相殿さいしょうどのさいしゃうどのは、、このこととどめたまかしおぼしけれども
    • さいしうどの宰相殿宰相さいしょう参議さんぎという官職かんしょく中国風ちゅうごくふうかた参議さんぎ大納言だいなごん中納言ちゅうなごん要職ようしょく殿との敬称けいしょう
    • ああ。
    • 格助対象たいしょう…を。
    • とどむ止むめる。制止せいしする。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お~になる。
    • かし終助ねんし・確認かくにん…よ。…ね。
    • おぼす思すおもいになる。
    • けり助動過去かこ…た。…たそうだ。
    • ども接助逆接ぎゃくせつ確定かくてい条件じょうけん…けれども。…のに。
    宰相さいしょう殿どのは、「ああ、(姫君ひめぎみ母君ははぎみが)このことをおめになってくれよ」とおおもいになったけれども、 現代語訳を表示
    28: 継母ままははことなれ、さしてとどめたま
    • ままはは継母のつながっていないはは
    • 格助連体れんたい修飾しゅうしょくかく…の。
    • なり助動断定だんてい…だ。…である。
    • 接助原因げんいん理由りゆう…ので。…から。
    • さしてそれほど。たいして。
    • とどむ止むめる。制止せいしする。
    • 〜たまふま(も)う〜給ふ補動~なさる。お~になる。
    • 助動打消うちけし…ない。
    母君ははぎみは)継母ままははであるので、それほど(つよく)めることはなさらない。 現代語訳を表示
    29: 女房にょうぼうにょうばうたちもたま 侍女じじょたちもいなさらない。 現代語訳を表示

    現代語訳げんだいごやく

    こうして年月ねんげつおくるうちに、一寸法師いっすんぼうし十六歳じゅうろくさいになり、(しかし)身長しんちょう以前いぜんおなじである。さて、宰相さいしょう殿どの(のところ)に十三歳じゅうさんさいになられる姫君ひめぎみがいらっしゃる。ご容貌ようぼううつくしうございますので、一寸法師いっすんぼうし姫君ひめぎみ拝見はいけんしたときから恋心こいごころつようになり、どのようにでもして思案しあんして、自分じぶんつまにしようとおもい、あるとき献上けんじょうひんこめって茶袋ちゃぶくろれ、姫君ひめぎみていらっしゃるときに、計略けいりゃくをたてて、姫君ひめぎみのおくちに(こめこなを)り、そして茶袋ちゃぶくろだけをっていていた。

    宰相さいしょう殿どの御覧ごらんになって、(いている理由りゆうについて)おたずねがあったので、「姫君ひめぎみが、わたしがこのごろあつめておきましたこめを、げなさってがります」ともうげると、宰相さいしょう殿どのはひどく立腹りっぷくなさ(って御覧ごらんにな)ったところ、予想よそうしたとおりに姫君ひめぎみのおくちに(こめこなが)いている。「真相しんそうは(一寸法師いっすんぼうしったことが)うそではない(ということだ)。このようなものみやこいてどうしようか、いや、どうしようもない。どのようにでもしなさい」とって、一寸法師いっすんぼうし命令めいれいなさった。

    一寸法師いっすんぼうしが(姫君ひめぎみに)もうげたことは、「(あなたが)わたしものをおりになりますので、どのようにでもりはからいなさい、と(宰相さいしょう殿どののご指示しじが)あった」とって、こころなかうれしくおもうことはこのうえない。姫君ひめぎみはまさにゆめているようながして、茫然ぼうぜんとしていらっしゃった。一寸法師いっすんぼうしが「はやはやく」と(出発しゅっぱつを)おすすめするので、(姫君ひめぎみは)暗闇くらやみなかとおくまでくような様子ようすで、みやこて、あしくままにおあるきになる。(姫君ひめぎみの)御心みこころのうちをはかります。ああ、なんどくなことよ。一寸法師いっすんぼうしは、姫君ひめぎみさきたせて(あといて)ってしまった。宰相さいしょう殿どのは、「ああ、(姫君ひめぎみ母君ははぎみが)このことをおめになってくれよ」とおおもいになったけれども、(母君ははぎみは)継母ままははであるので、それほど(つよく)めることはなさらない。侍女じじょたちもいなさらない。